classics-disco’s blog

西洋古典学を学ぶ一学生のブログ

サイエンスの語源と「アーツ・サイエンス」

 僕の通うICU国際基督教大学)は一学部一学科で、2年の最後に専攻を選択するという制度になっている。これは「リベラル・アーツ教育」と称されている(それについては

classics-disco.hatenablog.com

を参照)。学部の名は「教養学部」なのだが、学科は「アーツ・サイエンス学科」と奇妙な名をしている。僕は受験生の頃からずっと「アーツ・サイエンス学科」とはなんだろうと首をかしげてきた。前回はArtsについて書いたので、今回はScienceの語源を辿ってみる。

 

scienceの語源

 

 英語のscienceは、ラテン語のスキエンティアscientiaに由来する。スキエンティアという語と言えば、誰もが知っている「知は力なり」(scientia est potentia)という言葉の「知」は、言語ではスキエンティアである。つまり、スキエンティアは「知識」knowledgeを指す語である。

 これは僕にとっては少し意外であった。なぜなら「サイエンス」と聞くとまず思い浮かぶのは「自然科学」だったのだが、スキエンティアには特に「自然科学」の意はないのだ。スキエンティアという名詞はスキオーscioという動詞から来ており、スキオーは英語ではto know、つまり単に「知る」ことそのものなのだ。

 

アーツとサイエンスの関係性

 

 アーツのもとになったアルスは「人の手でなすこと」であり、サイエンスのもとになったスキエンティアは「知ること」である。前者は「学問」という意味もあり、後者は「学識」という意味もある。ではアーツ・サイエンスとは何を指すのだろうか。最も一般的な解釈は、アーツは人文系、サイエンスは自然科学系を指している、というものだ

College of Arts and Sciences - Wikipedia 

 

 しかし、僕はここにはより深い意味があるのではないか、と思いたい。それについては詳しく書かない(書けない)が、一言でいうと両者は学問分野の分け方というより、学問そのものの質的違いを示していると思われる。アルスは「人の手」で為すものだが、スキエンティアは物事の在り方を「知る」、つまりは客観的・普遍的なものを見出す、ということになろう。その意味でスキエンティアは今でいうサイエンスの使われ方になってきたのだと推測する。

 

 

 

 以上僕がずっと不思議に思っていた「アーツ・サイエンス」という語の意味について書いてみた。間違いや指摘があればコメントをお願いしたい。ここに書いたのはあくまで僕の解釈・推測でしかないので、あまり参考にならないかもしれないが、このようにある言葉(リベラルアーツやアーツやサイエンス)の意味について知りたいとき、語源に遡ることで意味がより明瞭に理解できるかもしれないという一例を示したつもりだ。ぜひ皆様も暇つぶしがてら語源を探ってみてほしい。知的好奇心が刺激されること請け合いである。