classics-disco’s blog

西洋古典学を学ぶ一学生のブログ

『ホメロス「イリアス」への招待』①

 先日出版された、川島重成、古澤ゆう子、小林薫*1編『イリアスホメロス」への招待』(以下『招待』と勝手に略称)を読んでいる。僕はこの本の出版記念会のちょっとした手伝いをした褒美としてこの本を賜った。大変ラッキーである。勿論先生としては、「この本を読んで君もしっかり勉強したまえ」という親切心もあったはずである。これも大変ありがたいことだ。先生の親切心と僕への期待(あるいはそんなものはないのかもしれないが)に報いるため、そして何よりずっと読みたかった本なので、春休みを利用して読み始めたところだ。

 

 『招待』はあらすじで「西洋古典学の研究者に向けた厳密な意味での学術論文集ではない」「知的一般読者諸氏に、『イリアス』の尽きぬ魅力を様々な角度から提示する』ことを目的としている、という断りを入れている。僕自身が知的一般読者に含まれるかという危険な問いはさておき、古典文学ビギナーである僕にとって嬉しい本である。この本の素晴らしい点はまず、著者の数がめちゃくちゃ多い。先述の三人に加え十一人、合計十四人の大御所の先生方が著した、十八章の論文で成り立っている。なんとこれら全員ICU出身のメンバーである(ICU古典強いね)。それと関連して次に、あらすじの「様々な角度」と銘打った通り、「イリアスの歴史的背景」、や「イリアス研究の歴史的背景」と言った、叙事詩理解の前提となる側面、また、「アキレウスの怒り」と言ったイリアスの主題を巡る論考、更には「嘆願」のモティーフや「イリアスにおける非英雄的なもの」などについても論じられている(幅広い!)。

 

 

 

イリアス』は僕が大学に入って最初に取り組んだ西洋古典学の本ということもあり、最も親しみを持っている。岩波文庫の『イリアス』を大学の三省堂で買った記憶はまだ鮮明だ。なんだかどきどきしたのを覚えている。あのどきどきが、このこの本を読んでいると蘇ってくるのだ。これはなかなかできない体験である。こんな素敵な本を書いてくれた先生方には頭が下がる思いだ…ほんとに。

 

 まだ少し先のことだけど、卒論のネタ構想としても役立つと思うので、この『招待』の章を読み進めながら感想めいたものを書き残しておくことにした。誰かの役に立つかは全く不明だけど、少なくとも僕の備忘録として、である。



*1:敬称省略ですみません汗